ヤハウェ(Yahweh/YHWH


【分類】

【解説】

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教において崇拝される神。この世とこの世にある万物の創造神とされる。

ユダヤ教では、イスラエルの民を嘉する神とされ、 専ら「アドナイ(主)」や「エロヒム(神)」等の代用語で呼ばれる。

キリスト教では、「子」なるイエス=キリストに対する「父」のペルソナに配当され、 一般に「エホヴァ」と呼ばれる。

イスラム教では、人類最後の預言者ムハンマドを導いたとされ、 一般に「アッラー」と呼ばれる。

この神の本名として伝えられているのは、発音の方法が分からない4つの子音の組み合わせ「YHWH」である。これがテトラグラマトン(神聖四文字)である。ゲマトリアにおいてその値は「26」と解釈され、 また「セフィロス(生命の木)」の各支に配当される。 また、特に天使には神の名が身に備わっていると言われる。 神の名には超越的な力があると考えられ、 様々な神秘に彩られている。

ところで、神の本名の発音についての知識は夙に失われている。抑も、神の名を呼ぶことは十戒の1つにも挙げられる禁忌であり、 神自身も名を問われて「我が名は“在りて在る者”」と答える ほど神秘の色合いが濃い。

しかしその発音は必ずしも完全に禁止されていた訳ではない。むしろ広く人名に組み込まれ、親しまれていた。 バビロン捕囚以前では異教徒にさえ知られていたようである。

ところが第2神殿 の時代には祭司の間で慎重に相伝されるようになる。 神名の禁忌は時代と共に強まっていった。そしてその結末として忘れ去られたのである。残されたものがテトラグラマトンであった。そして、神の名は元より呼び得ないものとされた。

失われた名は、かつては神秘主義者によって模索され、 今は言語学者によって復元されている。その結論が「ヤハウェ」と云う音である。

ヤハウェの性格はカナアン地方の古い神「イル」のものを多く受け継いでいる。しかし、イスラエルの部族神としての事跡は悉くヤハウェ固有のものである。そこで、そのあらましを以下に略述しよう。

ヤハウェは6日間で天地万物を創造した。その最高傑作は、自らの似姿として象られた人間アダムであった。しかしアダムは神の呪いを受けてエデンの園を追放される。エバに誘われて善悪の知識の木の実を食べ、ヤハウェの知性を侵したからである。

アダムの子孫が増殖して意に添わぬ振る舞いが目に付くようになると、ヤハウェは大洪水を引き起こして全生命の根絶を図る。しかし、ノアの箱船を許し、以後は絶滅計画を立てないと心に誓った。

それでもヤハウェの破壊的な性質は毫も変わらない。アブラハム、イサク、ヤコブに顕現してその子孫の繁栄を約束する 一方で、纏ろわぬ民は老若男女を問わず皆殺しにした。 そして、自らに従う者にも手酷い仕打ちを度々見舞った。 無論、自らに背いて他の神に向かう者があれば、激しい嫉妬に燃えて厳しく罰する。彼は自ら認める「嫉む神」なのである。 但し、ヤハウェに従い抜いた者には、やがて訪れる終末の時に楽園の門が開かれるであろう。

以上のようなヤハウェの事跡は、全般に矛盾と失策に満ちており、およそ全能の神には似つかわしくないものである。このように考えた者はグノーシス主義と概括される新思想に依拠して、ヤハウェに再解釈を施した。ヤハウェは「ヤルダバオート」等と名を改められ、愚昧で粗暴な出来損ないの神とされたのであった。

水月

【参考文献】