アレイスター・クロウリーのテレマ思想に用いられる、象徴的な女神の名称。別名を「緋色の女」といい、魔術的女性パートナーの総称でもある。「ベイバロン(Babalon)」とは、「バビロン(Babylon)」の事であり、『ヨハネの黙示録』第十七章に語られる、「バビロンの大淫婦」の事を指している。『ヨハネの黙示録』では、彼女は地の王たちと姦淫を行い、「赤い獣」に乗り、紫と赤の衣をまとった魔女として描かれている。クロウリーは自らを「666の獣」だとしたので、当然のように、この「赤い獣」に乗る闇の聖母を重視した。クロウリーの『法の書』には、この「緋色の女」が、地上のあらゆる王よりも強力な子供を産むことによって、喜び満ちる事が書かれている。また、『霊視と幻聴』には、聖杯の中の血にベイバロンが接吻すると、それが発酵し、サバトのワインになった事が書かれている。このワインは、エリクシール(霊薬)になるという(そのため、ベイバロンには、「杯」を象徴として用いられる)。ちなみに、『魔術――理論と実践』の「聖母ベイバロンについて、また聖母がお乗りになる野獣について」の項には、「あまりに重要かつ神聖にすぎる事柄であるため、活字にすることはできない」と記している。ケネス・グラントの『アレイスター・クロウリーと蘇る秘神』の「緋色の女」の項では、「緋色の女」を古代インドのタントラに求め、タントラの女司祭スヴァシニに、その源流を求めている。タントラには、シヴァ神と妃シャクティの性的合一による宇宙創生が説かれ、男性原理と女性原理の結合による解脱という思想があり、クロウリーはそれを西洋魔術の中に取り込んで、独自の性魔術を生み出した。その中で重要視されたのが、魔術的女性パートナーとしての「緋色の女」である。歴史を紐解いて見ると、古代バビロニアでは、新年祭の時に、豊饒の女神としてのイシュタルを祀るため、バビロニア王とイシュタルの巫女との、聖婚儀式が行われていたという。「緋色の女」とは、イシュタルの巫女であり、「ベイバロン」とは、イシュタルに代表される、古代密議の女神たちの事なのである。
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