昔、マチェチェという男がいて、河で漁をしていたが、足を踏み外して河に落ち、激流に呑まれて海に出た。マチェチェはどうする事もできず、波に身を任せていると、見知らぬ小島の近くまでやって来た。岸には多くの人間が集まって、マチェチェを見ながら何やら騒いでいる。マチェチェは、もし人食い人種だったらどうしようかと思ったが、魚に食われるよりはマシだと思い、上陸した。
ところが不思議な事に、この島には男が一人もいなかった。この島はバライサンという、女だけの島(女護島)だった。その為、島の女たちは、マチェチェを自分の夫にしようと、手引き足引きしてマチェチェを美しい宮殿へと連れて行った。
こうしてマチェチェは女だけの島で楽しく暮らしていたが、やがて故郷が懐かしくなって、海岸で物思いに沈んでいた。すると一匹の鯨が現れて、
「お前の哀しみは尤もである。私の背に乗れ。故郷に連れて行ってやる。」
と言ったので、マチェチェは鯨の背に乗って故郷に帰った。
ところが、帰ってみると、ほんの数年の間に山川草木すっかり変わり果て、家には見知らぬ人が住んでいた。マチェチェが詳しく話すと、ようやく思い出した人がいて、それは随分昔の出来事だということがわかった。祖父の時代にマチェチェという者がいて、ある日河へ行って帰ってこなかった。マチェチェの家は今は孫の代で、あの家がそれだと指すのであった。
マチェチェは長い夢を見ているのだと思った。
又、鯨は別れる時に、「五日後に豚五頭、酒五甕、檳榔五房を持って海岸へ行き、私に供えてくれ。これが自分に対する報酬である。」と言ったので、マチェチェは約束通りにした。すると鯨は人々に、造船技術を教えてくれたという。
これはアミ族南勢蕃帰化社の伝承であるが、「異郷で歓待され、帰ってみると長い年月が流れていた」というモチーフは浦島太郎に共通するものであり、「魚の背中に乗って故郷に帰る」というモチーフは、鮭の大助に共通するものである。
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