ニンフのカリストの神話は,アルテミスの潔癖をとてもよく表している。
カリストは,普通アルカディア族の祖リュカオンの娘,または孫といわれ,他の娘のように身を飾ったりすることには興味を持たず,髪は無造作に束ね,槍と弓とを携えてアルテミスの狩りのお供に加わっていた。そうして女神からはいつも大切に扱われていたが,ある日カリストは,天上から地の様子を窺っていたゼウスに見初められてしまったのだ。ゼウスは,快活に跳ね回る彼女の姿もひどく気に入ったようで,ある日地上に下りていくと,彼女の敬愛する女神アルテミスの姿になった。そして,女神のそばを離れ森の中で午睡を楽しんでいたカリストに近づくと,少女は一毫の猜疑も心の内に生じさせずアルテミスの姿を纏ったゼウスの問いかけに答えた。その様子はますますゼウスを誘うようなもので,彼は突然カリストを抱きすくめて愛し始めた。ゼウスはもとの姿に戻るが,驚き抗うこともかなわなかった。
カリストは恐れた。アルテミスの持つ,極点まで純化された清らかさへの希求は妥協の余地もないのを知っていたからだ。ゼウスとの関係が女神の耳に入れば仲間からも追い出されるのは必定だった。そんなことがあってから,カリストはしばらくの間狩りに随行することはしなかった。
だが狩りの楽しみは彼女の心を放さず,再びアルテミスの扈従に加わっていった。
初めのうちは誰も彼女を怪しまなかったが,ある日,女神は狩りの疲れを癒すために,仲間のニンフたちと水浴びをしようとした。カリストもついにその姿を見られ,アルテミスのお供からも放逐されてしまった。
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