ツォ族阿里山番の伝承によると、創世期は天が非常に低くて、月は太陽よりも光熱が烈しかった。だから昼夜の区別もなく照りつけられて、人々は安心して暮らす事が出来なかった。外出する時も、比較的光熱の弱い日の出ているときにするのだが、それでも薄板を背負っていかないと耐えられなかった。しかもそれより烈しい月が出ているときは屋内深く隠れているより他はなかった。夫婦間のボエヒエ(睦み事)もままならない為に、やがて人類が滅びそうになった。
これをご覧になったハモ神は大層不憫に思し召されて、ある日、両手で天を支えて押し上げると、今のように高くなった。しかし、余りに急な出来事だったので、月は影を失い、日もまた軌道を変えて東から出て東に入った。しかも暫く出たかと思うとすぐに隠れて暗黒の世界になるので、人々は山の木を伐って薪にし、伐り尽くすと家や家具などありとあらゆる物を燃やし尽くして、住む家も寝床もない有様になった。
そこで人々はハモ神に祈ると、太陽は日一日と高く昇り、やがて天の中央にかかるようになった。その次の日は頭上から少し西に傾いたかと思うと急に落ちて西に入った。そしてその夜、初めて天に鎌形の物が現れた。それが三日月であった。それ以来日が没すると、月が必ず出て、今日のようになったそうだ。
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