カーマとは、「欲望・意欲・性愛」を意味する。ギリシャ神話のエロスとよく似た愛の神である。妻のラティ(快楽)と、従者のヴァンサンタ(春)を連れて、あちこちを飛び回っている。かなりの悪戯好きで、砂糖きびで出来た弓から花の矢を放つと、それに射られた者はたちまち目の前の相手に恋をしてしまう。その姿は、一般的にオウムに乗った美しい若者の姿である。
『リグ・ヴェーダ』では、彼は創造の神でもある。「かの唯一者のうちに、最初にカーマ(意欲)が現れたと」とあり、アリストパネスのギリシャ神話で語られる創造神話と酷似している。つまり、カーマは全てを動かす原動力なのである。
後世のプラーナ文献などでは、彼はダルマとシュラッダーの間に生まれたといわれている。妻は前記したラティ、息子の名はアニルッダ、娘はトリシュナーであったとされる。
またカーマは、シヴァとの間に悪戯が過ぎたという、有名なエピソードがある。詳しくはパールヴァティーの項目を参照して欲しいが、シヴァの逆鱗に触れたカーマは、シヴァの第三の眼の発する閃光で焼き尽くされてしまう。しかし、嘆き悲しんだラティの哀願によって、カーマは肉体を取り戻すことが出来たのである。
このことから、カーマはアナンガ(身体を持たぬ者)と呼ばれようになった。愛には常に決まった形がない、ということだろうか。
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