昔、鍛冶ヶ谷という山奥に、鍛冶屋があった。そこに猟師がいて、ある時、何十貫もある大きな猪をしとめたが、自分一人では持って帰る事が出来なかったので、猪を、大蛇が棲んでいるという蛇渕(じゃぶち)の渕の端に置いて、手伝いの人足を雇うために村へ戻った。
ところが村人を連れて猪のある所へ戻ってみると、蛇渕から大きな蛇が出てきて、猪を半分ほど呑み込んでいた。
猟師は怒って、仕返しをしてやろうと、再び村へ戻って、大蛇が嫌いな鉄屑(かなくず)を鍛冶屋から持ってきた。
ところが蛇はもういなかったので、猟師は鉄屑を大蛇がいる蛇渕にまいた。
すると大蛇が怒って暴風雨と洪水を起こした。そのため山が崩れ、家が流されるなどして、猟師が住んでいた村は野になってしまった。
それで、鍛冶屋が野にしたようなものだということで、今に鍛冶ヶ谷というのだという。
これは高知県幡多郡西土佐村に伝わる地名由来譚で、この大蛇は雨や洪水を起こす水神である。
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