「世界を守るもの」の意。護世神。各方位にそれぞれ決まった神を配置するのだが、その構成や人数は、時代や文献によって微妙に異なっている。
文献別の構成は概ね下記の通りである。
| 方角 | 1 | 2 | 3 |
| 東 | アグニ | スーリヤ | インドラ |
| 東南 | | | アグニ |
| 南 | インドラ | ヤマ | ヤマ |
| 西南 | | | ニルリティ、スーリヤ |
| 西 | ヴァルナ | ヴァルナ | ヴァルナ |
| 西北 | | | ヴァーユ、マルト |
| 北 | ソーマ | ソーマ | クヴェーラ、ソーマ |
| 東北 | | | イーシャナ(シヴァ)、ソーマ |
| 上 | | アグニ | |
(
1)は「アタルヴァ・ヴェーダ」、(
2)は「ブリハドアーラニヤカ・ウパニシャッド」からで、これらはヴェーダ時代の古典である。(
3)は「マハーバーラタ」や他のプラーナ文献などによるもので、ヒンドゥ神話時代になってからの文献である。
ヒンドゥ神話ではやや混乱が見うけられ、必ずしも固定化していない。それでも、インドラ、アグニ、ヤマ、ヴァルナは、以降不動の位置を保った。マルトはヴァーユの別名ともとれるので、ヴァーユも同様であろう。
唯一、終始不動を誇るヴァルナは、ペルシアの聖典「アヴェスター」におけるアフラ・マズダーに対応するとされる神で、ペルシアがインドの西方に位置する事を考えると非常に興味深いものがある。
彼らローカパーラは、メール山の八方にそれぞれ城を構えている。「城」と訳されてはいるが、正確には都市の意であろう。
各都市の名は下記の通りである。
| 方角 | 名称 | 意訳 | 支配者 |
| 東 | アマラーヴァティー | 不滅なる所 | インドラ |
| 東南 | テージョーヴァティー | 輝きに満ちた所 | アグニ |
| 南 | サンヤマニー | 導き集める所(※) | ヤマ |
| 西南 | クリシュナーンジャナー | 黒い膏薬(※) | ニルリティ、ヴィルーパークシャ |
| 西 | シュラッダーヴァティー | 信仰心溢れる所(※) | ヴァルナ |
| 西北 | ガンダヴァティー | 香り立つ所(※) | ヴァーユ |
| 北 | マホーダヤ | 大いなる上昇(※) | クヴェーラ、ソーマ |
| 東北 | ヤショーヴァティー | 栄光に満ちた所(※) | イーシャーナ(シヴァ) |
また、彼らは「ディグガジャ(方角の象)」と呼ばれる象に乗っているとされ、この象を総称して「ローカパーラ」と呼ぶ場合もある。
各象の名は下記の通りである。
| 方角 | 名前 | 意訳 | 乗り手 |
| 東 | アイラーヴァタ | 大海から生まれたもの | インドラ |
| 東南 | プンダリーカ | 白蓮華 | アグニ |
| 南 | ヴァーマナ | 矮人 | ヤマ |
| 西南 | クムダ | 白睡蓮(※) | スーリヤ |
| 西 | アンジャナ | 膏薬(※) | ヴァルナ |
| 西北 | プシュパダンタ | 花の歯を持つもの | ヴァーユ |
| 北 | サールヴァバウマ | 全土の支配者 | クヴェーラ |
| 東北 | スプラティーカ | 美しい容貌を持つ者 | ソーマ |
アイラーヴァタはアブラマータンガ(雲の象)と呼ばれる事もある。また、ヴァーマナは西方に配される事もあるようである。
密教においては、彼らは「八方天」として取り入れられた。その場合の構成は下記の通りである。
| 方角 | 尊名 | 梵名 |
| 東 | 帝釈天 | インドラ(シャクラ) |
| 東南 | 火天 | アグニ |
| 南 | 焔摩天 | ヤマ |
| 西南 | 羅刹天 | ニルリティ(ラークシャサ) |
| 西 | 水天 | ヴァルナ |
| 西北 | 風天 | ヴァーユ |
| 北 | 毘沙門(多聞天) | クヴェーラ(ヴァイシュラヴァ) |
| 東北 | 伊舎那天 | イーシャーナ |
多くは「十二天」としてまとめられ、これに梵天(ブラフマー)、地天(プリティヴィー)、日天(スーリヤ)、月天(ソーマ)を加えるのが一般的である。
また、仏典における四天王もローカパーラであると言えようが、これは他項へ譲る。
(※)筆者による訳。誤訳の可能性もある。特にanjana(膏薬)の訳は限りなく怪しい。