サマエルとは非常に不思議な存在である。彼は天使であり、悪魔であるのだ。多くの作家はこの矛盾を解消するために「サマエルは堕天使である」としているが、それでは説明できないことがらも沢山ある。
サマエルとは神の悪意を意味するという。だが、samの語源はシュメール語の「毒」であるため、「毒を持つ輝かしい者」あるいは「毒の天使」と呼ぶのがより妥当であろう。
サマエルがはじめて登場するのはエノク書である。そこでサマエルはエノクに「デーモン共の首領」と呼ばれている。完全に悪魔である。しかし、これが「バルク黙示録」になると少し変わる。その中でサマエルはエデンの園に勝手にブドウの木を植えてしまい、それでアダムがワインを造ってしまったために天界を追放されてしまったのだという。根っからの悪魔から堕天使に格上げになったわけだ。また、マタイ伝には興味深い記述がある。なんと、サマエルはローマの守護天使であったのだというのだ。これはどうしたことだろうか?
はたして彼は悪魔なのか?堕天使なのか?天使なのか?それはいまだに良くわからない。彼はいろいろなものに顔を出す。彼は神の世界想像
を手伝った天使であり、セクンダデイの一員で天球層の火星を支配し、グノーシスの教義ではミカエル・ガブリエルと同列に人間に敵対する天使として挙げられているし(グノーシスの教義では、人間に敵対するのはキリスト教の天使だけのはずなのだ)、イブを誘惑した蛇でもあり、なんとカインの父でもあるというのだ。ユダヤ教のラビ達はサマエルをアスモデウスと同一視することすらある。ここまでくると、彼が何者なのから何人にも判断することは不可能であろう。
ただ、間違いなく言えることがある。それはサマエルが決して人間にやさしい存在ではないということだ。彼に対する様々な見解に共通するただ一つことは、彼は「死」を司る存在だという事だ。それゆえ彼は「死の天使」と呼ばれることもある。彼は毒が穂先についた槍を持っていて、つねに死を振りまいているという。彼がなぜその様な行為に走るのかはわからない。ある人はサマエルは悪魔だからだというし、ある人は神に命じられているのだという。なんともミステリアスだが、彼に近づ
けば確実に死ぬことだけは間違いない。
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