紀元前100年から紀元200年頃に成立したヘルメス文書は、ヘルメス・トリストギストスの啓示と言われる。神人であり、唯一賢者の石を手にしたとされる伝説的錬金術師。ギリシャ神話のヘルメスやエジプト神話のトートが融合したようである。名は「3つのヘルメスを合わせた者」の意。
プラトン主義を継承したと思われるヘルメス文書の教義は、知性・命・光である第一存在者が第二存在者を創造し、第二存在者が七つの惑星を含む宇宙を創造した。また、第一存在者は、自分の似姿の元型的人間も創造するが、この元型的人間は創造への欲求によって天の領域から地上に降り来たり人類の父となる。また、ヘルメス文書中のポイマンドレスによれば、人間の魂が惑星の隷属から解放され、七つの領域を抜けて人類の父の故郷たる最高天にいたるには、それぞれの領域の門を開けるための鍵となる知識、合言葉、そして番人であるデーモンの名が必要とされ、これはグノーシス主義の教義に酷似することから、ヘルメス文書がグノーシス主義の主要出典とも言われるが、これらの観念はプラトンを連想させることから、広く流布されたものとも思われ、両者の関係を決定づける根拠はない。
|