ギリシャ語で「水仙」という意味。ラテン語ではNarcissus(ナルキッスス)で、英語も同じにつづる。ギリシャ神話に登場する青年で、河の神ケーピーソスと、オーケアノスの娘レイリオペーの間に生まれた子。
ニュンペー(ニンフ)のエーコーは彼に恋をした。彼女はゼウスが他のニュンペーに言い寄っている時に、ゼウスの妻ヘーラーの心を歌と話で引きつけていた。エーコーの意図を察したヘーラーは、彼女にお喋りの罰を与える。それは、言葉を取り上げるというものだった。エーコーは、この時から自分の思いを言葉にすることができなくなっていたのだ。彼女の声は、彼女の前で語られた言葉の最後を木霊(echo)のごとく繰り返すことだけしかできなくなっていて、彼女がナルキッソスを思う心を言葉にすることもやはりできなかった。ナルキッソスはこの愛をすげなく拒み、彼に恋をした一人のニュンペーを死なせた。
エーコーを死に追いやった罪のために、彼は自分の姿のみに恋をするという罰が神々より下された。彼の受けた呪いの罰は、すぐにその力を示すことこそなかった。だが、ある時ナルキッソスは、澄んだ泉の水面に自分の姿が映っているのを見る。その時、神々の呪いが、彼を自らの像への恋心を抱かせた。水面に手を伸ばせば、波が立って像をかき消してしまう。彼は、他のことも忘れて水面をただ眺め続け、片時も泉の側を離れることができずに弱り果て事切れた。その後、彼は泉の周りに咲く一輪の水仙の花になった。
「自己を愛し、自己を性的対象とすること」を意味する「ナルシシズム(Narcissism)」という言葉は彼の名に因んだものである。
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