海神(一説には豊玉彦命という)の娘。ホヲリと結婚し、ウガヤフキアヘズを生む。妹のタマヨリビメは、ウガヤフキアヘズと結婚し神武天皇を生む。
トヨタマビメの「豊」は美称、「玉」は神霊を意味しており、また満ちたりるという意味も表している。玉の名を持つ女性は、霊を引き寄せる巫女としての力を持っていると信じられ、妹のタマヨリビメも同じ様な意味を示している。
海幸山幸神話によれば、海神の宮にやってきたホヲリが、宮殿の門の傍らにある井土の側に生えているユツカツラに登って待っていると、そこにトヨタマビメの侍女が水をくみにやってくる。ホヲリは彼女に水が欲しいと伝えると、彼女が差し出した容器に美しい玉を吐き入れた。
侍女の持つ容器に入った玉を見たトヨタマビメは、外に人がいることに気づき、外に出てみると、ユツカツラに登っていたホヲリを見つける。そして、二人は出会った瞬間恋に落ちてしまうのである。
その後の詳しい話は、ホホデミやウガヤフキアヘズの項目に譲るが、二人は結婚するも、出産の際本来の姿を見られたトヨタマビメは、海神の国へと帰ってしまう。
トヨタマビメが出産の際ワニの姿になってしまう理由としては、『古事記』に「産む時に掛れば、本つ国の形を似ちて産生むなり。故、妾、本の身を以ちて産まむとす」という記述がある。鰐とは鮫フカのたぐいを指していると考えられるが、『日本書紀』本文では「龍」である。
しかし、離れはしたがホヲリへの恋心がおさまったわけではなく、妹のタマヨリビメにその思いを託す。その時、一緒に託したのが下の歌である。
赤玉は 緒さへ光れど、
白玉の 君が装いし
貴くありけり。
奥つ鳥 鴨著く島に
我が率寝し 妹は忘れじ。
世の尽くに。
「赤い玉は緒までも光るけど、白い玉の様なあなたの姿はもっと貴い気がするわ」「水鳥の鴨が降り着く島で契りを結んだお前を忘れるはずがない。この世の終わりまでも、その愛は変わらないだろう」というような意味である。
海神であるトヨタマビメと、地上の神であるホヲリが結婚するということは異郷から訪れてくる神と結婚して、その神の子を生むということである。それは、山と海に象徴される力を獲得し、その御子がやがてこの国の支配者として君臨することを意味する。
このように胃世界から訪れる美しい海神の娘というモチーフは、伝説や民話にもよく見られる。『出雲国風土記』や『備前国風土記』にも、地上の姫のもとに通う海の神がやはり鰐の姿で登場しているし、他にも後世の浦島太郎説話の乙姫など、まさにトヨタマビメとイメージが重なるだろう。
【主要神社】
・諏訪神社(山梨県南都群)
・高忍日売神社(愛媛県伊予郡)
・綿津見神社(高知県高岡郡)
・与賀神社(佐賀県佐賀市)
・海神神社(長崎県上県郡)
・豊玉姫神社(鹿児島県川辺郡)
・鹿児島神宮(鹿児島県姶良郡)
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