グノーシス主義ヴァレンティヌス派の女神。エイレナイオス(130頃〜200頃)の異端宗派に関する報告書『異端反駁』の『プトレマイオスの教説』に書かれている、ソフィアの別名あるいは娘。「知恵」を意味するヘブライ語「ホクモート」からの借用語とされる。オグドアス(第8のもの)、ゲー(大地)、エルサレム、聖霊とも呼ばれると記されている。
『プトレマイオスの教説』におけるソフィアは、父なる神への探求心からパトス(熱情)にとりつかれてしまい、デュナミス(力)またはホロス(境界)によって制止され、固められた。父なる神が把握できない存在である事を納得するとソフィアは、その思い(エンテューメーシス)を、付属的に生じたパトスと共に捨てた。ソフィア自身はプレーローマ(グノーシスのおける、概念的な神々の国)に止まることができたが、エンテューメーシスとパトスは、ホロスによってプレーローマから締め出されてしまう。このエンテューメーシスの別名がアカモートと呼ばれるようになる。プレーローマから闇と空虚の場所に投げ出されたアカモートは、流産した胎児のように形相なく姿もないものだったが、キリスト(ここでは、プレーローマにいる神的存在を指す)の力により、外形づくられる。しかしそれは、ウーシア(存在)に基づく物であり、グノーシス(知識)に基づくものではなかった。すなわち、物質的なものであって、神霊的なものではなかったのである。光を失ったアカモートの、その悲しみと恐れの中から、この物質的な宇宙が生じることになる。
アカモートはもう一度嘆願し、救いを求め、それに応じた父なる神は、ソーテール(救い主)に権威を授けて使わした。アカモートはソーテールの力によって、今度はグノーシスによって外形づくられ、パトスからも切り離されることができた。ただし、すでに習性となっていたので、完全にパトスから切り離されたわけではない。アカモートはソーテールの力を借りて、プレーローマのアイオーンたちを模倣し、物質的世界の創造主たるデーミウールゴスを生んだ。デーミウールゴスは、その上にいる母アカモートやプレーローマの神々の事を知らぬまま、自分が全ての創造を行ったと思いこみ、7つの天を構築して君臨した。こうして、人間はパトスに基づく「物質的」なもの、デーミウールゴスに基づく「心魂的」なもの、アカモートに基づく「霊的」なものの3つの分かれる事になる。
やがて、アカモートの種子が皆完成される時、彼女はプレーローマと物質界の中間の場所から、プレーローマへと復帰してソーテールと結婚し、「霊的」な人々は「心魂」を脱ぎ捨てて叡知的な霊となりプレーローマへ入り、ソーテールの従者なる天使たちに花嫁として迎えられるのだという。そしてこの世に潜む火は輝きだし、発火して、すべての物質を焼き滅ぼし、物質と共に燃え尽くされて無に帰することになる(この終末論は、『ヨハネの黙示録』における、天からおりでくる花嫁としての「エルサレム」と、それに導かれる人々に等しい)。
また、同じく『異端反駁』の『バルクの書』には、女神エデンが生んだ24人の天使のうちの一人として、その名をあげている。(一部eihwaz様追記)
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